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骨密度と食事・運動

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コツコツ努力で骨密度アップ

 川崎医療生活協同組合の健康づくり委員会主催で、毎年度3回行っている「健康づくりセミナー」の2022年度第1回が、6月30日に法人本部会議室とサテライト会場をオンラインでつないで開催されました。テーマは「骨密度と食事・運動」。川崎協同病院の柏木まり管理栄養士と、健康まちづくり推進部の小松厚志運動トレーナーが講師となって、組合員を前に骨粗しょう症の予防策などを話しました。以下は、機関紙「川崎医療生協」編集長で健康まちづくり推進部の城谷創一部長がまとめたものです。

骨粗しょう症って?

 骨粗しょう症は、骨の中の組織がスカスカになり骨がもろくなる症状です。骨の丈夫さを表す指標である「骨量」は、20歳ごろにピークを迎え、その後徐々に減少していきます。そのため、高齢になるほど骨粗しょう症になりやすく、特に女性は、閉経後に骨をつくる細胞を活発にする女性ホルモンが激減するため、注意が必要です。


3ヵ月でつくり替わる

 骨は約3ヵ月の周期でつくり替わります。「破骨細胞」が古くなった骨の組織を壊し、壊したところには「骨芽細胞」が新しい骨の組織をつくるといった作業が繰り返され、この「破骨細胞」と「骨芽細胞」のバランスがうまく取れている場合は、骨は正常に保たれます。しかし、「破骨細胞」の働きが強すぎて「骨芽細胞」とのバランスが悪くなると骨粗しょう症になります。

骨折しやすい部位
 骨粗しょう症になると骨折しやすくなりますが、骨折しやすい部位は、手首や、腕・脚の付け根、背骨などの関節や体重がかかりやすい部分です。このなかで背骨や股関節を骨折すると寝たきりになるリスクが高く注意が必要です。

予防法は?
 骨粗しょう症予防には、骨をつくるための栄養素を取り入れる「バランスのよい食事」と骨量維持につながる「運動」が必要です。エネルギー源となるごはんやパンなどの主食と、筋肉をつくるために必要なたんぱく質を摂る肉や魚などの主菜、ビタミンやミネラルを多く含んだ野菜や海藻、きのこ類などの副菜、この主食、主菜、副菜をバランスよく摂ることが大切です。

まずはカルシウム

 カルシウムは骨や歯をつくるために必要な栄養素ですが、筋肉や神経の動きを正常に保つためにも必要です。1日に必要な摂取量は、男性750mg、女性650mgです。
 カルシウムが体内に吸収される割合で一番吸収しやすいのが、牛乳やヨーグルトなどの乳製品(吸収率約40%)、つづいて、しらすや桜エビなどの小魚類(約30%)、小松菜やひじきなどの野菜や海藻類(約20%)となります。


ビタミンDも

 ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を促進し、骨を形成する助けを担う栄養素です。カルシウムを多く含む食品と一緒に食べることが大切です。1日の摂取量目安は8.5μgですが100μg未満なら摂取しても問題ないと言われています。また、ビタミンDは日光浴(紫外線)をすることによって体内でもつくられます。

ビタミンKには注意

 ビタミンKは、骨に存在するたんぱく質の働きを活性化して、骨形成を調整する栄養素です。1日の摂取量目安は150μgです。
 しかし、この栄養素は、ワーファリン(抗血栓薬)を服用している人には要注意です。かかりつけ医師に相談してください。


ビタミンCは水に溶けやすい

 ビタミンCは、骨を構成しているコラーゲンの合成に必要な栄養素です。コラーゲンが生成されることでしなやかな骨をつくることができ、骨折の予防になります。1日に必要な摂取量は100mgです。
 ビタミンCは水に溶けやすいので、生で食べるのが効果的ですが、イモ類などにはでんぷん成分が含まれており、このでんぷんがビタミンCを熱などから守る性質があるので、イモ類は調理してもビタミンCをとることができます。


骨に悪い栄養素も

 骨に良い栄養素を紹介しましたが、骨の形成に悪い影響を与える栄養素もあります。例えばナトリウムです。ナトリウムは食塩などの主成分ですが、体内でカルシウムと結合して、尿として体外に排出してしまう役割を持っています。
 減塩が必要になりますが、みそ汁の中に野菜をたっぷり入れたり、食塩や醤油の代わりに香辛料や薬味野菜を使ったりするといいでしょう。


リンの過剰摂取に注意!
 リンはカルシウムと結合して骨や歯を構成している栄養素ですが、過剰摂取すると逆にカルシウムの吸収を妨げてしまいます。リンを多く含む食品のなかで気を付けたいのが、インスタント麺やスナック菓子、ハムや練り製品などの加工食品です。

ビタミンAが破骨細胞を活性化

 ビタミンAは過剰摂取すると、骨芽細胞の働きを阻害し、破骨細胞を活性化させてしまうので要注意です。食品ではレバーやうなぎの蒲焼に多く含まれています。

カフェインやアルコールも

 カフェインやアルコールには利尿作用があるため、過剰に摂取すると、カルシウムが尿と一緒に体外に排出されてしまうため要注意です。

運動で骨密度アップ

 運動によって骨に刺激を与えることによって、破骨細胞を抑制し、骨芽細胞を活性化させ、丈夫な骨を維持することができます。骨密度の維持に効果のある運動はウォーキングやスクワット、かかと落としなどあります。